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【TwoLaps ハーフマラソン日本記録へのチャレンジ:10000mのためのハーフマラソン】~後編~

新谷がハーフマラソンで日本記録を出すまでのトレーニングと結果をすべて公開したところ、いくつかの質問をいただきました。せっかくの機会なので、ずっと僕らを追いかけてきてくれたEKIDEN Newsの西本さんに聞き手と執筆をお願いし、新谷と二人でドーハ世界陸上からの三ヶ月のトレーニングを振り返ってみました。素晴らしい記事に仕上がったのでぜひご覧ください。昨日、前編を公開させていただきました。

僕らの振り返りでは網羅できなかったのですが、日本記録更新を疑ってない人間がもう一人いました。 PMをしてくれた宇賀地です。僕らの取り組みや新谷の直前の走りをみて「出るっしょ」と言ってくれたことは新谷のなによりの自信になったと思います。おそらく僕の「大丈夫。でるっしょ」の1億倍の威力があったに違いありません(笑)それでは後編もお楽しみください。


前編はこちら

トレーニングの記録はこちら↓

トレーニング 1ヶ月目

トレーニング 2ヶ月目

トレーニング 3ヶ月目

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ーーあとは前提条件のコメントもよくみました。前提条件のハードルが高すぎる(笑)

横田
この前提条件をやりきれるメンタリティがヤベエ的なやつですね。

新谷
横田さんから「日本記録を狙うハーフだよ」と言われたのは、10月の終わりくらいだったんですよ。
それも会食の最中に。それまでは冬場の脚作りの一環としてハーフかなという認識でいたんです。ゲストランナーとして出場したMINATOシティーハーフマラソン(2019年12月1日開催)みたいな。横田さんは日本記録を狙うハーフという位置づけだったらしくて。お互いの認識が違うことを会食の場で知るという(笑)「横田さん、そんなに本気なんですか?」と。そこからしっかり意識して練習をやるようにしました。

ーーということは気持ちの面も含めると実質、3ヶ月弱で仕上げたわけですか。

新谷
でも、自分の性格も考えると十分な期間だと思いました。私は集中力を長期間持続するというのが苦手で。3ヶ月というのは準備期間としては十分でしたね。

横田
実際、トレーニング頻度は多いと思った?

新谷
いや。

横田
ね。(一同笑)

新谷
5000mや10000mと比べて、マラソンやハーフってゴール後、倒れるようなことってないじゃないですか。息が荒くなって倒れこむようなゴールじゃないでしょう?正直、ハーフの練習をしているときに、余裕度を感じながら練習がやれました。いつも練習でも力んじゃう私にとって、それはよかったです。5000mや10000mほどの苦しさがないから、ちょっとだけ、いいなと思いました(笑)

ーー新谷さんくらいになっても、5000mや10000mってきつくて嫌なんですか。

新谷
きついですよ。だからといって、トラックからハーフやマラソンに移行すればというのは嫌なんですよ。だって、2時間以上も走り続けたくないし。

ーー一同笑

新谷
そもそも陸上を始めたのが間違いでした!陸上に手を出してしまったのが。中学校のときに、素直に帰宅部に丸をしておけばよかったです。

ーー新谷さんの場合、陸上じゃなくても、どんなスポーツに手を出しても、ここまであがってきてるんでしょうけどね。横田さん、他にはどういう質問が来てましたか?

横田
1週間の距離を知りたいというのは多くコメントがありましたね。

新谷
私は日誌とかつけないんですけど、計算すると1週間で200km。1ヶ月で800km位、走ってます。
1日の距離を30kmに設定して。金曜日が午後オフだから、補強と15kmジョグをいれて。日曜日が補強がないので、20kmを時間を見つけて走ってます。そうして、1日あたり29~30kmでまとめてます。そうすると1週間で200kmになるんです。

ーーいま、さらっと言ってますけど、多くないですか。それ。

新谷
これは人それぞれだと思うんですけど、本当は1週間に200kmも走らなくても、実際走れる人はいると思うんです。この距離が絶対必要かと言われたらそうじゃない。私にはこの距離があってたのかなと。実際にハーフ走り終えた後も脚は大丈夫だったんで。余裕もありました。

横田
週間距離は200kmだけど、メリハリをつけてるなと思いますね。金曜日と日曜日は1日1回しか走らないとか。それはぼくではなく、ジョグの距離やペースは新谷が決めているんで。毎日、たらたら走るんじゃなくて、休むところを作っているところがポイントなのかな。ポイントが週に2回なんです。ぼくら的にはロングランとペースランはポイントに換算されないんで。

新谷
トラックでやる練習だけがポイント練習という認識なので。クロカンやトラックでのペース走はペースが速くても、遅くても、これはポイント練習にはカウントしません。400m、1000mのインターバルや5000m3本とかはポイント練習です。それ意外はジョグの延長線上なので、リラックスして走ります。

横田
そこはぼくも全く理解できないんですよ。ジョグで疲労を抜くとか理解できない人種なんで。貯まるじゃん。だったら、流しをしたほうが疲労は抜ける。

新谷
ただ、走るだけだったら、疲労は残りますよ。疲れるだけで。私のジョグはリズムどりなんです。リズムを作りことで、凝り固まった筋肉をほぐしていくイメージでいます。動かなかった日のほうが肩とかが凝っちゃうんですよ。だから、遅くても速くてもいいんです。自分にあったリズムでリラックスした状態で距離を走ることが大事で。練習というよりは身体をほぐしたいなという気持ちで走っているんで。今日も走らなきゃという強迫観念もないし、だからしんどくもない。

ーーはああ。新谷さんにとってジョグとはマッサージみたいなものなんですね。中でも大事にしているのは距離ではなく、リズムだと。だから週間の距離数やメニューが表に出ることは二人にとって問題ない。

新谷
そうです。そうです。ジョグのペースとかも質問されるんですけど、私、ペースなんてみてないです。15km、10km、8kmという自宅から走れる3つのコースを決めてて、その都度、選んでコースを走ります。そのコースを自分のリズムで走るので、時計はつけてますけど、ペースは意識しない。
毎日、コースが決まっていれば、「この日は調子が良かった、悪かったと判断ができる」その日の身体の調子を把握するバロメーターにもなります。同じコースを走っていれば、その確認ができるんです。確かに飽きるんですけど、いい練習になります。

ーー同じコースを走ることがいい指標になってるんですね。

新谷
午前中、しっかり脚を作った日は、午後はダウンみたいな感覚でゆっくり走ろうと思うんですけど、15km、20kmのジョグのときは後半をペース走のような感じ速いリズムで走ってます。

横田
聞いてると面白いんですよ。「長い距離があったほうがリズムをつかみやすい」って。

新谷
はい。

横田
新谷にはリズムに入る瞬間があるらしいんですよ。短い距離だと、速くそのリズムに入らないとジョグが終わってしまう。だから練習にならないと。20kmあれば、最初はリズムの乗れなくてもあとから乗せていけばいいという気持ちの余裕があっていいらしんですよ。それ全然わかんない。

ーー横田さん、すみません。ぼくそれわかります。

横田
えええええっー!全然わかんない。

ーーこれ、長距離走者あるあるなのかな。

新谷
そうです。そうです。

ーーなんか、うまくハマる瞬間があるんですよ。

新谷
早ければ3kmくらいでハマるんですけど、5km超えてもハマらないときがあるんです。20kmあれば、最初の10kmはキロ6やキロ5でいいや。ゆっくり身体を動かして、後半頑張ればいいやと思うから気持ち的に楽なんですよね。

ーーつまり、ハマってから、どれだけ長く走れるかがポイントですよね。

新谷
はい。

横田
ぼくは5歩で乗せなきゃいけないタイプなので。

一同笑

ーーそうかスタートして5歩か。

横田
スタートして5歩で乗せないと、気持ちが悪い。

ーーフルマラソンとかだと8kmまでに乗せたらなんとかなる。みたいなところがありますね。乗っからなかったら地獄です。

新谷
そうです。そうです!それが怖いからマラソンに手を出したくないんですよ。最初の5kmでハマらなかったら、10kmでハマらなかったら、残りの30km1時間30分走らなきゃいけないんですよ。絶対嫌だ。

横田
すみません。素人みたいな質問をしていいですか。そのリズムがハマるというのはランニングハイみたいなものとは違うんですか?

ーー違います。

新谷
全然、違いますよね!

ーーその日の体重とか、路面とか、気候とか、なんかすべての要素があわさって、「今日のフォームはこれ」みたいなものがあるんですよ。今日の接地はここか、今日の腕振りはこれだ。というのが、走ってる途中に出てくるんです。それさえ崩さなければ最後まで走りきれる。

横田
ぜんぜんわかんない。

新谷
そうです!ずっと行けるっていう感覚になったら、オッケーなんです。「このリズムいい。このリズムだったら行けるわ」というときがあるんですよ。

横田
ないです(きっぱり)

ーーフルマラソンだと5km以内にハマっておきたいんですよ。

横田
5km以上も走れないです。

新谷
そうそう。ある程度、練習を踏んでおけば、30km過ぎまではいけるんですよね。

ーー横田さんは、新谷さんのいう「ハマる感覚」がわかんなかったんですね。

横田
わかんないのもいいかなって。

新谷
わかんないときがありすぎて、引っ張ってもらってるときに、たまにリズムが合わないんですよ。

ーーぼくも「ハマる話」はこれまであまり理解してもらえなかったんですが、唯一、藤原新さんがどこかのインタビューで話していたのを読んだことがあります。

新谷
だから、ジョグの動きも毎日違うと思います。

横田
ぼくには同じに見えますけどね。

新谷
もちろんハマるタイミングもそうですし、疲労があって動きが悪いとか、いいときもあるんですけど、一日一日、ジョグの形は全然違うと思います。

ーー前に砧公園の外周を歩いているときに、新谷さんにすれっすれで抜かれたことがあるんですが、そのときの最短距離のコース取りで走ってて、あのときなどはまさに「ハマってる」ときだったんでしょうね。

横田
柏原くんが坂道を登るときに、「ここに足を置いたらいい」というのが見えるのと一緒でコースが見えてるんでしょう。

ーー事務所の前のバス停あたりの直線で。たぶん、ここ気持ちいいんだろうなと思ってたんです。

新谷
そうです!そうです!あそこスピードに乗りやすいです。一番スピードが乗りにくいのが、逆側にある橋のあたりです。

横田
それ、西本さん家の近くじゃない。

ーーそうですね。

新谷
あそこ通るたびに西本さんのことを思い出します。あそこで会うことが多かったですよね。

ーー横田さんのメニューを消化していく中で、二人の中で手応えみたいなものはあったんですか?

新谷
私はないです。最後まで不安しかなかったです。横田さんのメニューには疑いはなかったんですけど、3分10秒ペースでハーフマラソンを押し切れるかということに対する不安です。

横田
ぼくはずっと手応えはありましたよ。1週間毎に確実に成長していったのが、まずひとつ。ぼくの中では確信してました。ぼくには計算があって、新谷というのは、練習の1.5倍を本番で出してくるタイプなんですよ。練習での仕上がりに1.5倍の新谷変数を計算にいれたら本番では100%出るなと。本気で走っても1000m2分55~56秒くらいなのに、下りとはいえ、10kmの駅伝の最初の1kmを2分55秒で入っていく人ですからね。

一同笑

横田
そういうの見てきたんであんまり驚かない。練習自体も条件が悪い中、例えば、強風の中でのトラック5000m3本とか、相当メンタルきついと思うんですよ。通常、こういう最終調整ってロードでやることが多いんですけど、トラックでやったんですよ。ごまかせないじゃないですか。その中でも設定以上、ぼくはもっと遅くても良かったんだけど、新谷が5000m15分50秒じゃないと意味ないですっていうから、「おおう」と。疲労がそれなりにたまった状態で15分50秒で3本揃えるのは、かなりきつかったと思うんです。彼女はそうじゃないと意味がないって。

新谷
でも、寸前まで「やっぱやめたいです」って言ってたんです。アップ終わって、スタート5分前くらいに「やっぱ、今日、動かない気がするんで、やめたいです」って。東京に戻ってからやりたいですって言ってんですけどやりました。

横田
ぼくとマロン(ストレングスコーチ)が600mリレーして引っ張りました。

一同笑

ーー横田コーチが作ったスピード系のメニューもありながらも、マロンコーチと身体のシャーシを作り上げるという作業も同時進行ですすめていたわけですよね。

横田
マロンも自分がやりたいことと、新谷の身体の声を聞いてメニューを組み込んでくれたのは大きかったと思いますね。

ーードーハからストレングスの部分で足りないなと思ったのはどういうところでしょう。

横田
ドーハの前までは脚のどこかが痛い。ということが多かったんですよ。それまでは体幹、つまり腹筋や背筋といった部分しかできなかったんですが、ドーハ以降は股関節やお尻まわりを重点的にやるようになって、そこも含めて体幹をしっかり作り上げられたから、怪我をせずにトレーニングの継続につながったように思います。一番大きかったのは常に全力で走るのではなくて、余裕があるなかで自分をコントロールできると、スピードが出やすいということをわかったこと。

ーー新谷さんレベルをもってしても、そのことをようやく知ったと。

横田
スピードは全力を出さないと出ないと思っていたのがそれまでの新谷で。彼女だけじゃなく、ほとんどの人がそう思っているでしょう。そもそもスピード何よ?という話なんです。レースに必要なスピードは全力疾走じゃない。レースに必要なスピードをより出しやすくするために、つまり恋率的に出すためにトレーニングをすればよいので、必ずしも全力を出す必要はないわけです。新谷のレースペースは400mトラック74秒。それは一生懸命走らなくても出せるスピードです。さっきのハマるじゃないですけど、20本のなかで74秒でコントロールをするのが、今回のテーマとなってと思うんです。だから一本目からハマるんじゃなく、徐々にハマればいい。ハマったところから、脚を回していけばいいという感覚はわかるんです。今回、彼女はそれがわかったんだなと思います。

新谷
普段、5000mや10000mを走る上でのインターバルは400m70秒~72秒間で行います。ハーフマラソンになると、3分10秒。つまり74~76秒のペースになります。インターバルに望むにあたって気持ちが楽になりました。5000mとかだと、66秒から70秒を狙いますから、それに比べると74~76秒のペースはすごく楽。

ーーそれはちょっと笑いながら話すくらい楽なんですね。

横田
そこが理解できないんだよなあ。本数は倍ですから(笑)でも、振り返ってみると距離を走る必要はないんですよ。レースペースの練習をメインに据えて、その補助の練習をどうやって組むか。集団走や朝練があると、選手はしんどいと思うんです。前の日、ポイントで次の日の早朝から集団走とかになるとコンディションきついんです。うちのチームだと、朝はゆっくり起きて疲労を抜いて、それから朝練してご飯を食べるということでもいいので。そういう環境だからこそ、できたメニューかなと思いました。

ーー次はどういうステップを踏んでいくんですかね。本来は4月にスタンフォードで10000mで自己ベストを出す。つまり、2013年の自分超えをすることを狙ってましたが、そのレースも流れ、5月の日本選手権も流れてしまいました。

横田
そうですね。10000m仕様にしあげていたんですけど、もう一回、ハーフに立ち返ろうかなと考えてます。

ーーなるほど。ピークをあわせる時期がまた先になったから、もう一回、エンジンだけでなく、シャーシも作り変えて、排気量も車体も大きい車にバージョンアップするみたいなイメージですね。

横田
10000mのためのハーフマラソンという取り組みが新谷にもフィットしたわけで。もう一回、作り直すというのは時期としてもありでしょうね。

新谷
ハーフのための練習が良かったです。この試合がなくなった期間に10000mのためのハーフの練習を取り組んでみたいと思います。

ーー最後の質問です。ということは、ヒューストンハーフまでのトレーニングがベースとなるのはわかりましたが、それは強度が上がるものなんですか?それともさらに追加される要素があるんでしょうか?

横田
ぼくは別のものを足すと思います。

新谷
私は強度を上げたいな!

横田
こうやってふたりで作っていくんですよ。

新谷
完全に意気投合してるわけじゃないです!

横田
こういうやりとりはあのメニューからは読み取れないでしょう。
毎日、これなんですよ(笑)

                        文章・写真:西本武司

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