アスリートのキャリアと投資理論

前回書いたイノベーションの記事が好評だったので、経営や金融といった切り口からチームやアスリートにスポットをあてていくシリーズを始めたいと思います。気まぐれなので今回で終了するかもしれません(笑)今日はアスリートのキャリアを投資理論の基本である分散投資いう観点から話をしたいと思います。主に若い方向けに書いているという前提のもとに読んでいただけると幸いです。

分散投資ってなんだ

この辺は説明は面倒なのでwikipediaを引用しますね。
“分散投資(ぶんさんとうし、diversification)とは、投資金額を分散していくつかのものに投資する手法である。一つのものに投資するとなんらかの要因で投資対象の価値が下落した場合は投資資金がほとんどなくなってしまうので、そうしたリスクを軽減するために行われる投資手法である。”(wikipediaより引用)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%86%E6%95%A3%E6%8A%95%E8%B3%87

つまり、一個のものに集中して投資をすると、それがだめになったときに資産が一気に減ってしまいますよ。ということです。例えば、ある一社だけの株に現金全てをつぎ込んでいたのにその会社が倒産してしまったらどうでしょうか。そういったリスクを減らすために、いろんな種類の資産(株、債権、投資信託など)、世界のいろんな地域の資産に時間差で投資をしていくことで、リスクを減らし、期待するリターンを得る確率を高めます。

Don’t Put All your Eggs in One Basket( 卵を全部一つのかごに入れるな)

これは分散投資に関する有名な言葉です。自分の持っている卵を1つのカゴにいれるとその卵を落とした時にその卵が全て割れてしまいます。カゴをいくつか用意して運ぶことで割れるリスクを抑えることができます。卵が仮に1つ割れてしまったとしても、他の卵が残り、残った卵が孵化をして鶏になりまた卵をうむ可能性があるのです。これが分散投資の一番重要な点です。そしてもう1つ大事なのは“卵 “という点です。卵はいろんな形となって長期的に価値を生み続ける可能性が高いです。ニワトリになって卵を産んだり、形を変えてエッグベネディクトになったりします。例えば、バスケットに入れるのが卵ではなく目玉焼きだったらどうでしょうか。目玉焼きは食べたら終わりです。

↑僕がつくった図なので雑ですが許してください(笑)

競技だけに集中しろ=人生のリスクをとれ

幸い僕は言われたことないのですが、「余計なことしないで競技に集中しろ。」という指導者がいると聞きます。それは、一個のバスケットにたくさんの卵を入れまくれ。と言っているのと同じです。つまり、カゴを落としたら(競技で失敗したら)、また0からなにかをつくりあげなければいけないのです。同じように、アスリートが「僕(私)は、競技だけに集中したい」と練習に集中し、空いた時間の多くを、価値のうまないことに費やすのは、一つのカゴに卵をいれていることと同じことになります。競技がだめになったとき、、、。そのあとはご想像にお任せします。それがどういうことかは、ここまで読んでくださればよくわかると思います。
一方で多くのリスクを取らなければ大きなリターンを得られないと言うのもまた真実です。そういった戦略をとりたいときは周りにいる人を分散させることでリスクを減らすことができると思います。陸上界、スポーツ界だけでない人と付き合うことも最低限のリスク回避手段の1つです。(危ない人と付き合うとリスクが増すので気をつけてください笑)もしくは分散してる人を近くに置くこともリスク回避手段の1つです。ぼくは選手がなるべくリスクをとれるように、自分がなるべく活動を分散することで選手のリスクを少しでも減らしたいと考えています。けど最近はもっと選手のコーチングを密にしたいなーと思ってます。

マロンがとった分散投資

↑僕がつくった図なので雑ですが許してください(笑)

競技だけに集中しろ=人生のリスクをとれ

幸い僕は言われたことないのですが、「余計なことしないで競技に集中しろ。」という指導者がいると聞きます。それは、一個のバスケットにたくさんの卵を入れまくれ。と言っているのと同じです。つまり、カゴを落としたら(競技で失敗したら)、また0からなにかをつくりあげなければいけないのです。同じように、アスリートが「僕(私)は、競技だけに集中したい」と練習に集中し、空いた時間の多くを、価値のうまないことに費やすのは、一つのカゴに卵をいれていることと同じことになります。競技がだめになったとき、、、。そのあとはご想像にお任せします。それがどういうことかは、ここまで読んでくださればよくわかると思います。
一方で多くのリスクを取らなければ大きなリターンを得られないと言うのもまた真実です。そういった戦略をとりたいときは周りにいる人を分散させることでリスクを減らすことができると思います。陸上界、スポーツ界だけでない人と付き合うことも最低限のリスク回避手段の1つです。(危ない人と付き合うとリスクが増すので気をつけてください笑)もしくは分散してる人を近くに置くこともリスク回避手段の1つです。ぼくは選手がなるべくリスクをとれるように、自分がなるべく活動を分散することで選手のリスクを少しでも減らしたいと考えています。けど最近はもっと選手のコーチングを密にしたいなーと思ってます。

マロンがとった分散投資

TWOLAPSにマロンという可愛い名前をした、いかつい見た目のストレングスコーチがいます。彼は、平成国際大学を卒業したあと自衛隊体育学校で800mの選手として活動をしていました。1分48秒台のタイムをもっていましたが、お世辞にも実業団で活躍したとは言える実績ではありません。しかし彼は、いま、有名実業団もスタッフとして雇いたい!とオファーがくるようなキャリアを28才で築きました。彼は自衛隊体育学校のときに僕とトレーニングパートナーでした。彼はセネガルとのハーフですが、津軽弁と標準語しか話せませんでした。そんな彼は僕が英語で話しているのを見て、突然英語の勉強を始めます。ORANGEのスペルさえ怪しかったのですが、競技以外の時間のリソースのほとんどを英語の学習にあてました。そして25才で引退した後すぐにオーストラリアへストレングス&コンディショニングの勉強に旅立ちます。なぜならそういったスキルをもった人材が必要になる陸上界になると僕が彼に伝えていたからです。残念ながら実業団経験者で英語を操れる人間はごくわずかです。裏を返せばそれができれば強みになる。恥ずかしながら陸上界はそんなもんです。彼はアドバイスを素直に受けいれ、

競技実績  英語  ストレングトレーニング

という3つのバスケットに卵を入れまくったことでセカンドキャリアでJump Start に成功しました。オーストラリア人の可愛い彼女というおまけつきです。いまでは僕より英語が上手で海外遠征では超頼もしいです。アスリートにとって、自分にとっての”卵”と”カゴ”がなんなのかを考えることは非常に大事です。それを自分だけで考えるのではなく人にアドバイスを求めたり、人の意見に耳を傾ける素直さも大事だということをマロンから学べました。僕も自分の人生の大事な決断はなるべく陸上界から遠い人に相談するようにしています。

ちなみにマロンの競技の方は、僕のタイム設定で練習をしていたので早くなりませんでした(笑)

まとめ

・自分にとっての価値の生む卵とバスケットはなにかを見極めよう

・なるべくリソースを分散させてリスクを減らそう

・リスクをとりたかったら分散する仲間を手に入れよう

イノベーションは引き算から始めよう

序章


僕はSFCで経営学を主に学び、卒業後にアメリカの公認会計士の資格をとって、いまはフロリダ大学大学院のスポーツマネジメント修士を専攻しています。(さっさと卒業しろよというツッコミはお控えください)

何が言いたいのかと言うと、僕はコーチングや運動生理学は学んだことがなく、組織(チーム)のマネジメントも個人(選手)のコーチングも、体育学からではなく経営学の視点から考えてきました。ビジネスで使われるフレームワークは競技にいかせるし、経営学の理論は組織や人をマネジメントする際に有用だなと、学生の頃から感覚的に思ってきました

僕の思考や生き方に特に大きな影響を与えてくださったのは
大学の2年間ゼミでお世話になった上山信一教授です
マッキンゼーの共同経営者として企業や行政の改革に従事されてきた方です
その先生のもとで人生一厳しくご指導をいただいたことで
上山先生の改革や変革を起こす血が少しでも僕に流れていると信じております

今日は経営学の視点からTWOLAPSを紹介したいと思います

イノベーションは引き算からはじめる

いま僕のメンターをしてくださっている早稲田大学ビジネススクールの長谷川先生は

イノベーションは機能の引き算からはじめよう

とよくおっしゃいます

事例をあげてみましょう。スティーブ・ジョブスは一度アップルを去るものの12年の時を経て同社に復帰を果たします。彼が戻ってきたときのAppleは多様な製品とサービスを販売しようとし苦戦をしていました。そんな中、彼は300以上あった製品を10製品にまで一気に減らし経営資源を集中させました。削る思考は製品開発にも現れます。開発者がつけた機能の多くのお客さんにとって不要だとし、ユーザー視点で無駄な機能を徹底的に削っていきます。

同じようにフィットネス業界で急成長を遂げているカーブスは、フィットネス業界に必ず必要とされる、更衣室、シャワー、プール、男性客、男性スタッフという機能を削りいままでフィットネスジムに通いずらかった女性たちのニーズを捉えることに成功しました。

TWOLAPSが削ったもの

それと同じ発想で陸上の長距離界で当たり前に存在する機能を削りました

削る際に大事にしたのは

・アスリート(ユーザー)視点で無駄な機能
・コーチ(企業)が重要性を論理的に説明できないもの

という視点です。削ったのは以下の機能です、

・集合しての朝練
→好きな時間に起きてやればいい。だいたい勝手にやる。やらないのは田母神くらい。
・集合
→大事なことは選手のアップ中に個別に話す。自分の都合にあわせて練習に来れば良い。
・寮
→そもそもお金がないのでつくれない。
・日誌
→話すほうが多くの情報を引き出せるので不要。選手が自分のためにやるのであれば勝手にやればいい。
・体重管理
→嘘つくやつがいるので不要。というか走れてればいいので不要。
・団体行動
→無駄な時間が多いので不要。
・練習参加
→一人でできるなら不要。自由にしても勝手にくる。来ないのは田母神くらい。

つまり、管理を目的とするものの多くを削りました。管理や外的な動機付けが選手の行動規範の多くを占めている場合、自律した選手を育てるのは非常に難しいです。この辺はSelf Determination Theory という有名な論文を読んでいただくのが良いかと思います。
https://en.wikipedia.org/wiki/Self-determination_theory

外的な動機付けではなく内的な動機付けによって行動できる組織環境をつくることをチーム作りの最優先事項とし、不必要な“管理”という概念を排除することによってそれを実現させました。

そしてなにかを削るということでそれ以外に資源を集中させることができます。スティーブ・ジョブスは製品数を絞ることで1つの製品の開発期間を短くすることに成功しました。そうすることで他社よりも早く新しい機能を備えた商品を発表することができ競争優位につながりました。

TWOLAPSでは、管理を排除する代わりに他のことに資源(ヒト・モノ・カネ・時間)を費やすことにしました。

・動きづくり
・ストレングストレーニング
・リハビリテーション
・勉強会
・オフコミュニケーション

イノベーションは新しい技術だけを呼ぶのではなく、不要な機能を削りプロセスを変えることでも起こすことができます。

結果が出ずに既に1つチームをつぶしている人間がえらそうに言うのもなんですが、僕はこの組織づくりが正しいと思って前に進めています。強調したいのはそれは他の組織を否定するものではまったくないということです。いろんな組織があってそれに賛同する人がそこに集まればいいと思います。いろんな組織ができればそれを選ぶ側(選手)にもリテラシーが求められるようになります。

僕はこの組織づくりに賛同してくださる方達と新しい価値を生み出したいと思っています。コアとなる価値観を共有した仲間とだからこそ激しいトレーニングや過酷な状況を乗り越えられるのだと思います。組織づくりはそのための手段でしかないのです。これからも不要そうなものは容赦無く削っていきます。

最後に新谷さんの名言を紹介して今回のnoteを終わりたいと思います。

私は整理整頓が得意です。物も、人間関係も。

陸上競技におけるプロについて考えてみる

TWOLAPSでコーチングをしている新谷選手(積水化学)が「プロってなんだろう」と素朴な疑問をtwitterで投げかけました

現役時代から多くのアスリートを見てきましたが、彼女ほど”結果”に対してこだわりや責任感をもって競技をしてきた選手はいないと思っています。なので彼女の投げかける”プロとは”という言葉にはとても重みがあります。

日本における陸上競技というスポーツではプロの定義はありません。なので、「言ったもの勝ち」という感が否めない世界です。

為末大さんはご自身のブログの中でこう書いています(2018年1月)

そもそもアマチュアとプロフェッショナルとは何か。いろんな見方があるが、私は技能のレベルが一段違い、またその技能によって生計を立てているという認識でいる。ではアマとプロの技能は本当に違うのかというと、もちろん違うところも大いにあるが、領域によってはさほど差がない。これまではそれでも何かしらの免許や、有名人として認識されることや、ある種のお墨付きによりプロとアマの境目が別れていたが、今後snsを含みあらゆる表現方法が誕生してくるとその境目がなくなっていくだろう。おそらくとてつもないレベルのプロ中のプロの世界と、それ以外のプロとアマが混在した世界に二分化されるのではないか。プロより上手いアマ、アマより下手なプロが誕生すると、次に困ることになるのが、一部を除いて一体誰が本当にすごいのかがわからなくなることだ。

プロより早い実業団ランナーがいる。プロより競技に専念している実業団ランナーがいる。実業団より早い市民ランナー/学生がいる。

と混沌とした日本陸上界の中で”プロ”を定義することは非常に難しいのが現状です。しかし、為末さんが述べられている”一体誰が本当にすごいのかわからない世界”はトップスポーツとしてあるべき世界なのでしょうか。

なので僕が勝手に考えるプロの基準をみなさまにお伝えできたらと思います
陸上競技を楽しむ方達がプロとはどういったアスリートなのかを見極めていただくしかないので、少しでも本物を見極めるのに役立てば幸いです。(僕が勝手に決めてるのでもちろん異論があるのは理解しています)

僕が考えるプロの基準は以下の4つで、すべて満たしている必要があると考えています。

①競技結果により生計をたてていること
②スポンサーor所属企業/支援者が望む結果や価値を提供していること
③+αの付加価値を提供できていること
④ぶれない競技哲学を持っていること


競技結果でのスポンサー収入や賞金で生計を立てないで他の価値を提供している場合は個人的にはプロランナーではなくて副業ランナーだと思ってます。


陸上競技にはファンという概念が希薄で、(ここではそれの良し悪しの議論はしません)スポンサー収入(or企業チームからの給与)が選手の大きな収益源ですお金を出す側が求める価値を提供できるかがプロの最低条件だと考えます。


社会貢献をしているか、メディア露出があるか、アスリートとしてのメッセージを発信できているかなど、期待に応えるだけでなく、期待値を超えていく価値を提供できているか


そして一番大事なのは、ブレない競技哲学を持っているか。自分はこういうアスリートだ。それを明示、黙示を問わず発信、体現できているか

私個人としては、大迫傑選手、設楽悠太選手、神野大地選手、新谷仁美選手は超プロだと思います。(それ以外にもたくさん”プロ”の方はいらっしゃいます)彼らの価値を毀損しないためにも”プロ “の使い方にはみんなが気をつけていって本物がわかる世界にしていきたいですね。

*写真は@EKIDEN_Newsさんからお借りしました

アスリート審査員が決定しました!「陸上フォトコンテスト~夢と希望あふれる1シーンを大募集~」

https://www.jaaf.or.jp/news/article/13848/?tag=%E5%8D%9C%E9%83%A8%E8%98%AD

卜部 蘭が日本陸上競技連盟公式サイト様に取材していただきました。

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